『ゲストハウス』 | ルーミー
13世紀を生きた、ペルシア文学史上最高の神秘主義詩人ともいわれるジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩です。
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)8週間コースの後半でも紹介されています。
= = = = =
ゲストハウス
人間であることは、ゲストハウスのようなものです
毎朝、新しい客人がやってきます
喜び、憂鬱、意地悪束の間の気づきが
思いがけない客人としてやってきます
訪れるものすべてを歓迎し、もてなします
例え悲しみが大勢でやってきて
家具も残さず
あなたの家を空っぽにしても
それでも、客人ひとりひとりに敬意をもって接します
もしかしたら、新たな喜びを迎え入れるためにあなたを空っぽにしてくれているのかもしれません
暗い気持ち、羞恥心、悪意も玄関で笑いながら出迎えて招き入れます
誰が訪ねてきても感謝します
なぜなら、そのひとりひとりがはるか彼方から
あなたの人生の案内人として送られてきたのだから
- ルーミー著 コールマン・バークス (英訳)
The Guest House
This being human is a guest house.
Every morning a new arrival.
A joy, a depression, a meanness,
some momentary awareness comes
As an unexpected visitor.
Welcome and entertain them all!
Even if they’re a crowd of sorrows,
who violently sweep your house
empty of its furniture,
still treat each guest honourably.
He may be clearing you out
for some new delight.
The dark thought, the shame, the malice,
meet them at the door laughing and invite them in.
Be grateful for whoever comes,
because each as been sent
as a guide from beyond.
- by Rumi, translated/interpreted by Coleman Barks
= = = = =
不快な考えや感情に抵抗し、避けたいと思うのはごく自然なこと。ごまかしたり、なかったかのように振舞うことが当たり前になっているかもしれません。
ゲストハウスの例えは、無理やり受け入れることを説いているわけではありません。苦しい考えや感情が沸き上がってきたとき、それらを招き入れ、存在を許してみるとどんなことが起きるか。ゲストハウスと同じようにドアを開けて、居場所と自由を与えてみる。私たちが温かさと優しい好奇心をもって自分の考えや感情に寄り添うことを促しています。
また、その渦中にいる時は見えなくても、困難な考えや感情も、私たちがそれを許せばやがて通り過ぎることを示唆しています。そしてその後にやってくるものが何か。大掃除をして、すっきりとした場所には新しいものを受け入れるスペースができているかもしれません。
実はこちらの詩、ルーミーが書いた詩として世界中で読まれていますが、正確にはルーミーが書いたそのまあの言葉の訳というよりは、ルーミーが執筆した全6巻に及ぶ叙事詩『マスナヴィー(The Masnavi)』から翻訳者のコールマン・バークスがいくつかの文章を引用し、まとめた詩であることがわかっています(※1)。 元々のルーミーの文章には宗教的な要素も反映されており、どちらのバージョンもとても美しい詩です。
また、興味深い点として、仏教の『スッタ(Sutta)』と呼ばれる経典にも、外からの客人を沸き起こる感情に例え、ゲストハウスの比喩を用いた記述があります。
2000年前のスッタ、800年前のルーミー、そして現代のバークスによって紡がれてきたゲストハウスの詩。今を生きる私たちに何か気づきを与えてくれているのかもしれません。
【参考】
(※1) A Poem That Isn't: Buddhist Mindfulness and Rumi's "Guest House"
https://youtu.be/1E79pU6GzNs?feature=shared
0コメント